犬に漢方薬

犬に漢方薬 | 漢方を知り、犬の治療の質を上げよう

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今回も「犬の漢方薬」について解説していきます。。テーマは「飼い主さんが漢方知識を持つべき3つの理由」です。

犬の漢方薬は動物病院で処方されるものだから、獣医さんにお任せすればいいよね?というのも一つの考え方です。

しかしながら漢方薬選びには「」が大切で、その「」を決めるには、普段の飼い主さんの観察が重要です。

*「(しょう)」とは?
漢方薬を選ぶ上で手掛かりとなる、病気に対する体の反応や、抵抗力の強さを表す指針です。漢方薬はこの「証」に基づき最適な方剤が選択されます。
詳しくは1つ前の記事で解説していますので参考にしてください。

家庭で長く愛犬と過ごしていて、どんな小さなことでも知り尽くしているのは他の誰でもない飼い主さんです。

その飼い主さんからの的確な情報提供があることで、愛犬が受けられる医療の質がぐっと上がります。

何より飼い主さん自身が納得し、安心して犬に漢方薬を利用できます。

医療を専門家に「おまかせ」するのではなく対等な立場で協力し、犬にとってベストな治療は何か?を獣医師と一緒に考える。飼い主さんも治療に参加し、考え、選択する。

このような姿勢が愛犬が受ける医療の満足度を高め、飼い主さんの安心にもつながると思うのですが、今この記事をお読みの読者の皆さんは、どう感じますか?

というわけで「飼い主さんが漢方知識を持つべき3つの理由」をお話ししていきます。

この記事の作成者:Office Guri 諸橋直子
日本ペットマッサージ協会認定 ペット東洋医学アドバイザー、JADP認定中国漢方ライフアドバイザー、SAE認定犬の管理栄養士アドバンス、JADP認定上級ペット看護士。
手作りごはん歴19年。犬の手作りごはん、アロマテラピー、薬膳など家庭でできる愛犬のケア普及のため活動しています。各種オンライン講座開講中。特に人気の犬の薬膳講座は受講者数250名を超える。犬の手作りごはんの専門Youtubeチャンネル(登録者数4,120名)運営中。

飼い主さんが漢方知識を持つべき理由その1【診断の質を上げる】

飼い主さんが獣医師への「的確な情報提供者」になることで診断の質を上げることができます。

例えば犬の「湿疹・皮膚炎」を考えてみましょう。

実は以前メルマガ上で行ったアンケートでも、この皮膚トラブルで悩む犬がものすごく多いことがはっきりわかりました。なのでこの例を挙げて皆さんと一緒に考えていこうと思います。

まず特徴的な症状で見てすぐわかるもの、

・皮膚が乾燥しているか
・分泌物が多く化膿しているか
・赤みや腫れた感じがあるか

から漢方の「」の指針のひとつである「」「虚実間」「」はある程度判別がつきます。

*「」「虚実間」「」については一つ前の記事を参考にしてください。

ただ湿疹・皮膚炎だけで選べる漢方薬がざっと10種類以上あるため、より愛犬に適した漢方薬を選ぶためにはやはり飼い主さんの漢方の知識に基づく普段の観察眼と、獣医師への情報提供が重要になります。

例えば「皮膚の乾燥」に「普段から犬が疲れやすく、活動量も控え目」という情報がプラスされれば

●小建中湯(しょうけんちゅうとう)

が選択肢に上がってきます。

小建中湯」は体質的に虚弱で胃腸が弱く、ストレスにも敏感な場合に用いられる方剤です。状態としては体がエネルギー不足に陥っている「気虚」に用いられます。

飼い主さんが普段から「犬が疲れやすく、活動量も控え目」という情報を提供し、さらに「食も細く、最近生活環境に変化がありストレスを感じているのかも…」という具合に普段の生活の様子を伝えることができれば、これは大いに獣医師の診断の手助けとなります。

皮膚トラブルといえば、まずは患部の状態を調べそれに併せて治療計画が立てられますが、漢方の場合一見皮膚トラブルとは関連のなさそうな「虚弱」「食欲不振」「ストレス」といった普段の生活のことも含めて犬全体を対象として考えます。

もしこれが、「乾燥が強く」「手足の冷えがあり、歯茎の色も薄い」「疲れやすい」だと、血行不良からくる皮膚トラブルと考えて

当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)

が候補に上がってきます。

こちらは血行不良や冷え、食欲不振による栄養不足を改善する目的で使われる方剤です。皮膚トラブルの原因を血液の循環トラブルと栄養不足である「血虚」に求める場合の選択肢です。

こんな具合に丁寧に考えていくと、10種類以上ある「湿疹・皮膚炎」の漢方薬の選択肢の中で

「うちの子の場合はこれかな?」

というものが絞られてきます。

こんな風に獣医師が「どの漢方薬(方剤)を選ぶか」の判断を、飼い主さんからの情報が劇的に助けます。

飼い主さんが漢方知識を持つべき理由その2【ホリスティックな視点で治療に向き合える】

今あげた皮膚病の例でいうと「細菌感染や炎症」は西洋医学の領域で、抗生物質や消炎剤での迅速な対応がカギになります。

他方、漢方の視点は

ストレスによる影響
食欲低下や血行不良による、皮膚の栄養不足

という具合に、表面に現れている症状を含めて犬全体の状態を視野に入れて考えるのが特徴です。

言い換えると「皮膚炎の背景にある体のアンバランス」や「ストレスや環境変化による影響」など、検査数値には現れにくい部分も含めて総合的に考える視点です。

これにどんなメリットがあるかというと、治療の二段構えと言い換えることができます。

獣医師による西洋医学的な治療(抗菌剤や消炎剤の使用)に加え、漢方の知識を使い犬の体質や精神的な側面から考えることによる複合的な視点で、立体的な治療計画を立てることができます。

まさにこれは犬を全体で見る=ホリスティックな視点に立った見方だといえるでしょう。

飼い主さんが漢方知識を持つべき理由その3【飼い主さんが心から納得して治療を選択できる】

治療を獣医さんに「おまかせ」にしてしまうと、ある時点で飼い主さんは「本当にこの治療でいいのだろうか?」という不安を感じる瞬間があります。

もちろん獣医さんは獣医学のプロなので専門家としてしっかり対応してくれます。

しかしながら今行われている治療の必要性や意義などをしっかり話し合った上で飼い主さんが十分納得がいった場合と、おまかせしたので何となくわからないことがわからないまま進んでしまいもやもやするという場合では、治療の満足度が変わります。

また獣医さんと十分なコミュニケーションが取れないことが原因で、本来なら感じなくても良いような、感情的な不満が出てくる場合があります。

先生が不親切、気遣いがない、冷たい感じがするという感情的な不満は、実際には

「自分は専門知識がないからお任せにしたけれど本当はわからないことは聞きたいし、納得がいくまで説明してほしい、安心したい」

という願いの裏返しの場合が多くあります。

これが漢方治療の場合、飼い主さんは家での様子や愛犬の体調で気になることを獣医師に伝え、漢方薬選びの手助けをするわけですから、当然獣医さんと対等な立場で協力し合いながら愛犬の治療に向き合います

このように治療を選択する過程で様々なことを話し合うので、わからないこと、気になることをちゃんと質問し、納得がいく説明を求めることができるようになります。

この「自分で選択して、納得する」が実は非常に大事で、担当の獣医師とよく話し合って、納得した上で犬の治療に向き合うことは犬の病気治療にもとても良い影響を与えます

治療とは何か?を考える時、犬が元気になれるのはもちろんですが、飼い主さんが安心して自信を持って治療に向き合えることも同じくらい大切ではないでしょうか?

漢方薬について学ぶ過程で、犬の体と心に向き合い「(=病気の現れ方や体質)」を決める知識が身につきます。この知識が身につくことで、犬の治療に積極的に参加できるようになります。

これは漢方を学ぶ、漢方薬選びにとどまらない大きなメリットだと思うのですが、読者の皆さんはどう感じられるでしょうか。

次回予告「がん治療中の犬に漢方薬をどう使う?」

今回はここまでです。漢方薬について知ることは、愛犬の治療を

より愛犬にぴったりな、心と体を総合した、飼い主さん自身が安心して納得できる

ものにするための強力な武器になります。

というわけで次回は実際に「愛犬のどのような具体的な症状や悩みに漢方薬を活用できる?」という事例をご紹介します。

メルマガ読者の皆様からリクエストをいただいた

がん治療中の犬に漢方薬をどう使う?

をテーマにお届けしていこうと思っています。

術後の回復を助ける、放射線療法や抗がん剤の副作用軽減にも漢方薬が用いられるケースが多くあります。またがんにともなう体力低下や気力低下の改善を図り、犬のQOLを上げる際にも漢方薬は役立ちます。

なので上記の理由で漢方薬を検討されている方は、ぜひ次回の記事をお待ちくださいね。

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