犬のツボマッサージ

犬のツボマッサージを基礎から解説(1)ツボってそもそも何ですか?

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Office Guriの諸橋直子です。さて、前回「犬のツボマッサージに興味のある方へのガイドブック紹介」で書籍をご紹介したところ、実にたくさんの方が興味を持ってリンク先をクリックしてくださったようです。

決定版 犬・猫に効くツボ・マッサージ 指圧と漢方でみるみる元気になる

自宅でできるセルフケアとして、中国伝統医学=中医学は犬の飼い主さんたちに人気があります。ツボは中医学の治療法のひとつとして成立し、

・鍼
・灸
・指圧

によってツボを刺激し、体調を整える、病気の回復を助ける、健康増進などの目的で利用されてきました。

ちなみに前回の記事でご紹介した通り、犬に鍼を打てるのは獣医師のみです。人間に対する鍼灸師の資格をお持ちの方でも犬に鍼を打つことはできませんのでご注意ください。

ところでそもそも「ツボ」って何なのでしょうか?そしてなぜ「ツボ」に鍼を打ったり、温めたり、指圧すると犬の健康回復に手助けになったり、病気予防に役立つと考えられているでしょうか?

この「ツボ」の基本の考え方について、解説していきます。

「ツボ」って何?→ 正式には「経穴(けいけつ)」中医学ではエネルギーの流れる道の上にあると考える。

そもそこ「ツボ」とは何なのでしょうか?「ツボ」の話を始める前に、中医学で考える生理学の1つ「経絡(けいらく)」について理解する必要があります。なのでその話から。

中医学では、生き物の体の仕組みを考える際、

・気(き)
・血(けつ)
・水(すい)

という3つの概念を用います。

」はエネルギー。エネルギーというと少し怪しい感じがしますが、私たちの生命活動を支える代謝全般を古代中国の人たちは「気」という概念で説明しようとしました。

ちなみに代謝とは、私たちが生命を維持するために行っている化学反応全般を指します。最もわかりやすいのは、食事を摂ってそれを消化・吸収し、エネルギーに変えること、そして不要なものを排泄すること。これらは「新陳代謝」と呼ばれ、私たちにもお馴染みの言葉です。私たちの体を作り、不要なものを排泄し、維持するための大事な活動です。これらを古代中国の人は「気」の働きとして理解しようとしたんですね。

次に「」。これはシンプルに血液を指すとここでは理解してください。

最後に「」。これは「血」以外の体液、水分全般を指します。

中医学ではこの「気」「血」「水」が体を巡ることで生命の維持、健康の維持が行われていると考えます。さて「血」は血管、「水」は例えばリンパ液であればリンパ管を通って全身を巡ります。では「気」は?

「気」は「経絡(けいらく)」と呼ばれるルートを通って全身を循環すると考えられています。これが中医学の独特なところですね。それでは「経絡」はどこを通っているのか?というと、皮膚の下を通ってエネルギーを運搬していると中医学では考えます。地下鉄のようなものをイメージしていただくと、わかりやすいと思います。エネルギーを運搬する電車が通る線路ですね。

この線路が全身を巡っていく中で、皮膚の表面に列車の駅のようにエネルギーが溜まるスポットが表出します。これが「ツボ」=「経穴(けいけつ)」です。

このツボはスイッチのようなものと考えるとわかりやすいでしょう。このスイッチに刺激を与えることで、その経絡で繋がっている内臓や体の各部位にアクセスできるという考えです。

これがツボの基本の考え方です。何となくイメージできたでしょうか?

では「気」の循環ルートである「経絡」にはどんな種類があるのでしょうか?引き続き解説していきたいと思います。

経絡の種類=地下鉄路線の種類のようなものと考えよう

では経絡のルートにはどんな種類があるのでしょうか?少し漢字が多くなりますが、以下にご紹介します。

・前肢太陰肺経(ぜんしたいいんはいけい)
・前肢陽明大腸経(ぜんしようめいだいちょうけい)
・後肢陽明胃経(こうしようめいいけい)
・後肢太陰脾経(こうしたいいんひけい)
・前肢少陰心経(ぜんししょういんしんけい)
・前肢太陽小腸経(ぜんしたいようしょうちょうけい)
・後肢太陽膀胱経(こうしたいようぼうこうけい)
・後肢少陰腎経(こうししょういんじんけい)
・前肢厥陰心包経(ぜんしけっちんしんぽうけい)
・前肢少陽三焦経(ぜんししょうようさんしょうけい)
・後肢少陽胆経(こうししょうようたんけい)
・後肢厥陰肝経(こうしけっちんかんけい)

全部で12ルートあります。これを「十二正経(じゅうにせいけい)」と呼びます。

漢字が多くて目が痛いと感じるかもしれませんが、以下のルールに従って読むとわかりやすいです。

読み方のルールその1
五臓六腑と心包と呼ばれる部位から、それぞれ1本ずつ経絡が出ていると考えます。例えば「前肢太陰””経」であれば、「肺」から出た経絡であることがわかります。

【読み方のルールその2】
経絡は「前肢」または「後肢」のいずれかを必ず通ります。「”前肢”太陰肺経」であれば、前肢を通る経絡であることがわかります。

【読み方のルールその3】
経絡には体の浅い部分=表面に近い「陽」の部位を通るものと体の深い部分=「陰」を通るものとに分かれ、さらに体の前面を通るもの、後面を通るもの、側面を通るものに分けられます。

このルールに従ってみると「前肢太陰肺経」は、「肺」=胸部からスタートし、体の深いところを通って、前肢に抜けるルートだと読み取れます。実際に「前肢太陰肺経」は胸から始まり、前肢の脇の下近くを通り、前足の前面を通って犬の前足第一指に抜けるルートです。

ここでは経絡には様々な種類があると知っていただくのが目的なので、経絡の名前を全部覚える必要はありません。シンプルに「12のルートがあるんだな」と、今は概略を理解していただければOKです。

この12ルートに加えて、直接臓器と繋がっていない「督脈(とくみゃく)」と「任脈(にんみゃく)」があります。

まとめると「経絡には12のルートと督脈、任脈があって、そのルート上に様々なツボが存在している」になります。

ではなぜこの「ツボ」を刺激することが、犬の体調か管理や健康増進、病気予防につながると考えられているのでしょうか?

これについて「ツボ」の基本理論を次回の記事で詳しくご紹介していきます。ぜひ楽しみにお待ちくださいね。

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