お勧め書籍の紹介

書籍紹介:犬のツボマッサージに興味がある方へ

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Office Guriの諸橋直子です。今回は「犬のツボマッサージに興味のある方へのガイドブック紹介」です。

決定版 犬・猫に効くツボ・マッサージ 指圧と漢方でみるみる元気になる


初版は2011年と少し古いです。実は犬(そして猫)のツボマッサージ本は一時ブームになり割と色々な書籍が出たのですが、ロングセラーで絶版にもならず、現在も売れ続けている書籍はそう多くありません。そんなロングセラーの中でも、定番と言えるのがこの1冊です。

犬のツボマッサージ(=指圧)に興味を持たれる飼い主さんは多く、そういう方達の要望があって現在まで読み継がれているのだと思います。

というわけでこの書籍を手元におきながら、内容についてご紹介していこうと思います。

『決定版 犬・猫に効くツボ・マッサージ』はどんな人が対象?

そもそもこの本はどんな人が対象で、役立つ本なのでしょうか?

一言でいうと「犬の指圧やお灸などの、中医学的な家庭でのケアに興味のある飼い主さん」が対象です。

ところで「犬に指圧とかお灸できるんですか?」という基本的なところに疑問を持つ方も多いと思うので、そこから解説していきます。

犬に鍼灸治療を受けさせている飼い主さんは思いのほか多くいらっしゃいます。

インスタを眺めていると、定期的に動物病院で犬に鍼を打っている飼い主さんもおられますし、出張サービスを利用し自宅で犬にお灸をしてもらったり、犬に指圧を受けさせている飼い主さんもいます。

そうした様子をみて

「犬にも指圧ってありなんだ」
「犬もお灸するんだ」
「犬も鍼打つんだ」

と驚く方も少なくありません。

ちなみに犬に鍼治療(=鍼を犬の身体に刺す)を行えるのは獣医師のみです。「はり師」「きゅう師」の国家資格を取得した「鍼灸師」の方は、犬への鍼治療を行うことはできません。

そのため種類別にどこで受けられるか?をまとめると以下になります:

犬への鍼(はり):獣医師のみ行える。動物病院または往診サービスによって受けられる。

犬への指圧:獣医師以外でも、指圧の知識を持つ人であれば犬に行うことができる。

犬へのお灸:獣医師以外でも、お灸の知識を持つ人であれば犬に行うことができる。ただし、動物への使用に適したお灸の選択や、火傷防止のための安全対策を事前に知るのが必須。

動物への鍼灸治療を行なっている動物病院も、検索すると多くヒットします。牛や馬などの家畜への鍼灸治療は歴史も古く、古代中国では馬への治療に鍼灸を行っていた可能性が高いです。日本でも室町時代に馬の治療として、鍼、灸、湯治を行っていた記録があるそうです。

このように家畜または軍用として大切にされていた大型動物への鍼灸治療は長い歴史を持ちます。そして現代、犬が家族動物として人間とより近い関係を持つようになってからは、犬への応用も積極的に行われるようになったという背景があります。

さて、こうした状況の中「愛犬の健康管理や家庭でのケアに、指圧やお灸を活用してみたい」という飼い主さんが増えてきています。

そのような興味や、需要を持った飼い主さんがまずが手軽に学べるツールとして、この書籍は適切といえるでしょう。

犬の悩み別、どのツボを押せばいいかの紹介が充実。漢方薬の紹介もある。

では具体的にどんなことが書かれているかを紹介していきます。

この本は大きく2章に分かれています。

・第1章 犬・猫に漢方が効く理由
・第2章 病気の症状と家庭での治し方

それぞれ見ていきます。

第1章 犬・猫に漢方が効く理由

この本では「漢方」という言葉を用いてますが、これは「中医学」のことです。

中医学は中国古典医学のことです。漢方と言われると、一般的に「漢方薬」をまず思い浮かべる方が多いと思いますが、ここでは漢方薬のことではなく、中国古典医学にルーツを持つ中医学の考えたのことと捉えた方が理解がスムーズです。

さて、その中医学がなぜ犬(そして猫)に有効か?を中医学のこそ理論に基づき解説したのが第1章です。

中医学では、体の仕組みをどう捉えるのか?を

・陰陽学説
・五行学説

から解説しています。

このあたりは中医学独特の考え方なので、書籍の説明だけで全部を理解するのは少し難しいかもしれません。

中医学の基本書は人間向けのものがたくさん出ていますので、そうした書籍を副読本として併用すると理解の助けとなるのでおすすめです。

オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書


そして肝心の「経絡とは、ツボとは何か?」の解説が添えられています。つまり第1章を読めば、中医学の基本理論と「ツボとは何か?」が、おおまかに理解できるという章立てになっているというわけです。

第2章 病気の症状と家庭での治し方

「治し方」という表現が少し誤解を招きそうなので解説しておきます。犬が病気の時、基本はまず動物病院の受診です。獣医師による診断と適切な治療、これが大前提です。

「家庭での治し方」とあると、一見家庭で「治療」ができると誤解しがちですが、ツボへの指圧やお灸はあくまでの犬の回復を助ける一助という位置付けです。動物病院での治療にとって代われるものではありませんので、ご注意ください。

第2章では、犬への指圧の仕方、ツボの探し方の解説がまずあり、その後具体的に「こういう症状の時にはこのツボを」という項目が並びます。

症状の具体例はかなり豊富で、書籍の大部分を占めています。以下は目次からの抜粋です。

・1 目・耳・歯の病気
・2 肺と鼻の病気
・3 消化器の病気
・4 心臓の病気
・5 その他の病気

それぞれ症状に合わせておすすめのツボが紹介されており、おすすめの漢方薬や食事内容についてのアドバイスが併記されている場合もあります。

例えば「胃腸が弱い」という項目を見ると、おすすめのツボは

・足三理(あしさんり)
・内関(ないかん)
・中かん(ちゅうかん)

とあり、おすすめ漢方薬には「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」「平胃散(へいいさん)」が挙げられています。

食事療法には白米、オートミール、じゃがいもなどが挙げられています。

犬に漢方薬治療を行ってみたい方や手作りごはんで体調を整えることを考えている方には、有益なアドバイスといえます。

尚、犬に漢方薬を飲ませてみたい方は「漢方薬」をテーマにした書籍が別に出ているのでそちらを参考の上、かかりつけの獣医師へ相談してみることをおすすめします。

獣医版フローチャートペット漢方薬


全体的な評価:犬のツボマッサージについてまずは知りたい方向けの教科書的な書籍。ただし、読みこなすにはある程度努力が必要。

というわけで、『決定版 犬・猫に効くツボ・マッサージ 指圧と漢方でみるみる元気になる』をご紹介してきました。内容はボリュームがあり、犬のツボマッサージについて情報を得たい、犬の体の悩みに応じたツボを知りたい方には有益な内容です。

一方でツボマッサージの初心者の方にとっては、ツボの位置を探すのがこの書籍のみでは少々難しいという印象を受けます。ツボを探す際、骨と体のある部位を直線で結びそこからどのくらいの位置という表現が多いのですが、そもそもその骨の名前が普段聞きなれないものが多いです。(胸剣状軟骨といわれて、ぱっと「ここだ!」と言える人は少ないでしょう。)

そのためまずはその骨がどの位置にあるのかを書籍に掲載されている図を見ながら調べたり、犬の体を触りなが「ここでいいのか?」と試行錯誤しながら確認する作業が必須です。

こうした理由から気軽な入門書というよりは、しっかり学びたい方向けの「教科書」的な色合いが強い書籍です。必要に応じて中医学の基礎理論を解説した本を参考にしたり犬の解剖学の解説書を見る必要が出てくる場合もあります。

それでも丁寧に読みこなすことで愛犬の役に立つ内容がたくさん書かれていますので、興味のある方はぜひ、書店などで手にとってみることをおすすめします。

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