犬の血液検査項目の見方

肝臓の数値を理解・ポイント解説 | 犬の血液検査項目【初心者向け】

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犬の血液検査で肝臓に関連する数値の意味を解説します。

肝臓の数値を理解するために、下記の記事も併せて参考にしてください。

この記事は、一般の犬の飼い主が動物病院で獣医師からの説明を受ける際、理解を助ける基礎知識を身につけてもらう目的で執筆しています。

犬の病気の診断は獣医師が行うものです。血液検査の結果だけを参考に、ネット上の情報をみてこういう病気ではないか?と飼い主があれこれ想像したり、不安になるのはおすすめの姿勢ではありません。

基礎情報を元に、獣医師と犬の健康状態について飼い主自身も対等な立場で話し合い、共に治療に参加することができることを目指してこの記事を作成しています。ご理解の上、この記事を活用してください。

肝臓関連の数値は3つに分類

肝臓関連の数値は以下の3種類に分類できます。

  • 酵素関連
  • たんぱく質関連
  • 脂質関連

ジャンル別に数値の意味を解説していきます。

酵素関連

様々な代謝反応を担う肝細胞には、代謝に必要な「酵素」が含まれます。肝細胞が肝炎などの理由で破壊されると、酵素が漏れ出し血液中に流れ込みます。

肝臓の数値が「上がる」は、多くの場合、酵素関連の数値の上昇を指します。

AST(GOT)、ALT(GPT)

AST、GOTは、ほぼ全ての臓器に存在する酵素です。

AST肝臓だけでなく、心臓、腎臓、肺、筋肉、赤血球にも含まれます。これらの臓器や組織に障害が起こった際には上昇します。このため、ASTの上昇=肝臓の障害とは限りません

ASTのみが上昇した場合、どの組織・臓器に障害が起こったかを調べるために他の検査を行います。

ALTも肝臓以外の臓器に存在しますが、肝細胞中に多く存在するという特徴があります。ALTの上昇は、ほぼ肝臓の障害を表します

LDH(乳酸脱水素酵素)

LDHは生体内のほぼ全ての組織に存在する酵素です。LDHが上昇する際は以下のことが考えられます。

  • 肝・胆道系疾患
  • 膵炎
  • 心筋障害
  • 腎不全
  • 多発筋炎
  • 溶血性貧血
  • 悪性腫瘍など

LDHは様々な病気で上昇します。そのため病気が起こっている部位の特定には、他の検査を併用します。

γ-GTP

γ-GTPは腎臓・膵臓・肝臓に多く含まれる酵素です。

ウィルス性肝炎、肝障害、肝内・肝外胆汁鬱滞(うったい)の場合に高値になります。

たんぱく質関連

肝臓はたんぱく質代謝との関連も深い臓器です。

総蛋白

血清中のたんぱく質(アルブミン、グロブリンなど)の量を見ます。多くの場合、病気の有無を調べるスクリーニング目的で検査されます。

総蛋白は様々な理由で変動します。肝臓関連でいうと、数値が高い場合は慢性肝炎、低い場合は肝障害が疑われます。他の検査との併用で総合的に判断されます

BUN(血清尿素窒素)

たんぱく質は体内で分解されるとアンモニアになります。アンモニアはさらに肝臓で無害な尿素に作り変えられ、尿中へ排泄されます。BUNはこの尿素を指します。

腎機能が低下すると、BUNは血液中から濾過されず蓄積され高値となります。低い場合は肝障害、低タンパク血症、尿崩症などが考えられます。

ビリルビン

赤血球に含まれるヘモグロビンが代謝されるとビリルビンになります。肝臓はこのビリルビンを作り、体外へ排泄する働きを担っています。

そのため、肝硬変、急性肝炎、胆汁鬱滞(うったい)が起こると高値となります。

溶血性貧血などでも値が上昇します。

理解のポイント

肝臓関連の数値が、肝臓の「どんな状態」「何の機能障害」を表すか?をおおまかに理解しておくと、動物病院での説明も理解が深まります。

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