犬の手作りごはん栄養学

犬の手作りごはん「栄養バランス」で悩んでいる方へ(5)偏りのないごはんはどう作る?

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SAE認定犬の管理栄養士アドバンス | Office Guriの諸橋直子です。

今回も定期的に疑問が寄せられる「犬の手作りごはん、栄養バランスってどう考えればいいの?」について、解説シリーズをお届けしていきます。

【シリーズ過去記事はこちら】

前回の記事では

手作りごはんは『毎食』が完璧な栄養バランスである必要はない

多少、栄養素の凸凹があっても3日~1週間くらいのスパンでみて帳尻があっていれば大丈夫

というお話をしました。

また、初心者向けの「栄養学」本を1冊読んでおくと良いですよ、というお話をしたところ好評だったので、おすすめ本へのリンクを再掲しておきます。興味のある方は書店等で見かけたら、手にとってみてください。

手作りごはんの栄養を考える上で大切なのは「完璧さ」ではなく「偏りがないこと」です。

ではその「偏りがない手作りごはんって、具体的にどう作ればいいの?」が今回のテーマです。「偏りがない」をどう実践すればいいの?に答えて行く回となります。

基本は「肉(または魚)1:野菜1:炭水化物1」

犬の手作りごはんについては、「見た目の材料量:肉(または魚)1:野菜1:炭水化物1」の基本を守っていれば、ほぼ間違いがありません。

手作りごはん本によっては炭水化物を少なめに、その分野菜を多く、という比率を推奨している場合もあります。例えば:肉(または魚)1:野菜1~2:炭水化物0.5

こうした比率でもほぼ問題が無いと考えられます。

理由は、この手作りごはん栄養バランスシリーズの記事でもすでにお伝えしたように犬はタンパク質が十分摂取できていれば、糖質を必要としないからです。

参考:犬の手作りごはん「栄養バランス」で悩んでいる方へ(3)栄養を知ろう
https://www.officeguri.com/dog-nutrition-10/

そのため「糖質は少なくても十分」と考える場合、炭水化物の比率が0.5でも他の食材でエネルギーを十分摂取できていれば良い、と考えることもできるでしょう。

ただ、以前の記事お伝えしたとおり「炭水化物」をうまく利用した方が、手作りごはんのコストを適切に押さえられます。

何より、炭水化物に含まれる糖質は、吸収されてすぐにエネルギー源として利用できる、とても効率の良い栄養素でもあります。

そのため、初心者の方へは、私自身は肉(または魚)1:野菜1:炭水化物1という比率を推奨しています。

何より「1:1:1」という数字、シンプルでわかりやすいですよね。

初心者の方はまず、シンプルなことから覚えましょう。その上で、慣れてきたら状況に合わせてアレンジを加えるのがおすすめです。

さて、ここまでお話ししてきましたが「そんなざっくりした感じで本当に大丈夫なんですか?」と、まだちょっと心配…という方が多いと思うので、これで問題ない理由を、栄養学の視点で解説しようと思います。

米にもタンパク質はある。マグロはタンパク質だけでできているわけではない。

「米にもタンパク質はある」と聞いて「は?」と思う方も結構多いのではないでしょうか。

というのは、お米は通常「炭水化物」の仲間に入れられます。

そして、ここが実はイメージの落とし穴です。栄養学について普段触れる機会がない場合、「炭水化物に分類される食べ物は、含まれる成分すべてが炭水化物!」と誤った理解が生まれやすいからです。

実際には、炊いたごはんの60パーセントは水分です。炭水化物の比率は約37パーセント。少ないながら、タンパク質や脂質も含んでいます。

コメには少量のタンパク質も含まれる

じゃあ、一般的にタンパク質の多いとされる「マグロ」はどうでしょうか。生のキハダマグロの場合、74パーセントが水分です。タンパク質は約24パーセント。

確かにタンパク質の含有率は高いと言えますが、微量の脂質も含んでいます。

タンパク源」に分類されているからといって
マグロに含まれる栄養素が100%タンパク質のみというわけではないことに注意が必要です。

マグロの3/4は水分

結局なにが言いたいか?というと便宜上、

肉(または魚)1:野菜1:炭水化物1

という、非常にざっくりに見えるこの比率。

しかし1つ1つの食材には、様々な栄養素が含まれています。そのため食材を複数組みあわせることが、結果的に多くの栄養素をカバーすることにつながるのです。

ここからさらに発展させると

肉(または魚)1:野菜1:炭水化物1

という基本を守りつつ、野菜を日によって2~3種類混ぜて使ってみるのも良いです。

タンパク源の肉(または魚)も日替わりで鶏、豚、牛。しばらく肉が続いたから次がサケ、タラと魚にしてみるか、と材料をローテーションすることで、様々な栄養素が摂れます。

これを一言で表したのが「偏りがない」です。

まとめると、「色々な食材を組み合わせて食べる」が手作りごはんの栄養バランスを作ります。

「なるほど、複数種類の食材を組み合わせることで、結果的に必要な栄養が摂れるのが、手作りごはんなんですね」

そんな風にご理解いただければ幸いです。

手作りごはんだからこそ「栄養」を味方につけよう

最後にまとめです。

  • 手作りごはんの基本は「肉(または魚)1:野菜1:炭水化物1」でよい
  • 1つの食材の中には複数の栄養素が含まれるため、それらを組み合わせることで偏りが防げる

初心者の方は、まずこの2つの基本ポイントを理解してください。

ここが理解できた上ではじめて「手作りごはんを犬の健康づくりに役立てよう!」という次のステップに進むことができます。

栄養」を知って、犬の健康づくりの味方にしよう、というわけです。

栄養を知ることで、基本の健康づくり、体力づくりはもちろんですが

  • 皮膚の健康
  • 体力回復
  • 骨を丈夫にする
  • ストレスケア
  • 下痢
  • 便秘
  • ウエイトコントロール

といった、個別の悩みについても、食事から対策を行うことが可能です。

こんな風に、手作りごはんの初心者の方でも、将来的には「犬の健康」を積極的に食事から支えていきたい、と言う方。

そうした方向けにOffice Guriではオンラインで学べる「犬のための栄養学講座」をご用意しています。

この講座の受講生募集を、明後日2月16日(水)より10名限定で行います。

それに先立ち「手作りごはん初心者の方が栄養学を学ぶメリット」について、次号の記事で詳しくお話しようと思います。

こんな悩みに、こんな食材、こんな栄養素」という視点で具体的に解説していく予定です。

必要を感じる方は、是非楽しみにしていてください。

この記事は犬の健康基礎情報を学ぶ「ぐり通信」のバックナンバーです。
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