犬の手作りごはん栄養学

犬のごはんと魚の栄養学(4)「DHA」「EPA」

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犬の管理栄養士アドバンスの諸橋直子です。今回は魚の栄養学的メリットを解説する記事の最終回です(前回の記事はこちら )。魚に特有の栄養素、「DHA」「EPA」のお話をしていきます。

今回は少々複雑です。そのため、以下の流れで解説していきます。

  1. 必須脂肪酸を理解する
  2. DHA、EPAってなに?

「必須脂肪酸」とは

脂肪酸は、脂肪を作る成分の一種です。脂肪酸の種類によって、その脂肪の性質が決まります。中でも「必須脂肪酸」とは:

体内で合成できないので、必ず食事から摂取しなくてはならない脂肪酸

を指します。

さらに脂肪酸は、

  • 飽和脂肪酸
  • 不飽和脂肪酸

に分けられます。

このうち、「不飽和脂肪酸」は

  • オメガ3系脂肪酸
  • オメガ6系脂肪酸
  • オメガ9系脂肪酸

などに分けられます。

ペットフードの商品ラベルに「オメガ3系脂肪酸配合」と書かれたものを見かけたことはないでしょうか。あれは何のことだろう?と思っていた方は「あれは、配合されている脂肪酸の種類が書いてあったんだな」と、これでご理解いただけたと思います。

脂肪酸の種類を更に詳しく見ていくと、以下のようになります。

【オメガ6系脂肪酸】

  • リノール酸
  • アラキドン酸
  • 【オメガ3系脂肪酸】
  • α-リノレン酸
  • EPA
  • DHA

このうち、犬は

  • α-リノレン酸
  • リノール酸
  • アラキドン酸

の3つを体内で合成できません。そのため、必ず食事から摂取する必要があります。この3種類が犬の必須脂肪酸となります。

必須脂肪酸と「DHA」「EPA」の関係

3種の必須脂肪酸のうち「α-リノレン酸」を原料とし、犬の体内で合成されるのが「DHA」「EPA」です。

別の言い方をすれば「DHA」「EPA」は、材料がないと体内で作り出すことができません。そのため犬は「α-リノレン酸」食事から十分摂取する必要があります。では、「α-リノレン酸」はどのような食材に多く含まれるのでしょうか。以下に代表的な食材を挙げます。

  • しそ油:57,000mg
  • 菜種油:7,500mg
  • 大豆油:6,100mg

*すべて可食部100g中の、「α-リノレン酸」含有量

さて、体内では「α-リノレン酸」から「EPA」「DHA」を合成できるとすでに述べましたが、「α-リノレン酸」を多く含む食材自体、毎日頻繁に使う、というタイプの、ものではありません。それは上のリストを見ていただければ、おわかりいただけると思います。そうなると、「DHA」「EPA」が不足するのではないか?と心配になる方もいるでしょう。

そこで、魚の登場です。魚はその油に「DHA」「EPA」を多く含む食材です。そのため、魚から直接「DHA」「EPA」を摂取することで、犬に必要な量をまかなうことができます。

「DHA」「EPA」の働きを知ろう

ここで「DHA」「EPA」の働きについて解説します。

【DHA】
血管の健康維持、血中脂質のコントロールなど。DHAは脳や網膜に含まれるリン脂質の主成分でもあります。体のパーツを作る、材料にもなっています。

【EPA】
血管の健康維持、抗血栓作用、免疫や炎症の過剰反応を抑えるなど。DHAはその健康的な「効果」ばかりが着目されがちですが、実は体の構成要素として欠かせない物質でもあります。

ちなみに、α-リノレン酸から「DHA」「EPA」を作ることができる、という話をしましたが、ヒトの場合でその変換率は10%〜15%と考えられています。犬でもさほど高い率ではないことが予想されます。そして、前述のようにα-リノレン酸を含む食品は、さほど多くはありません。そのため、魚から「DHA」「EPA」を直接摂取する方が効率がよく、不足を防ぐことができます。

DHA」「EPA」は青魚に多く含まれます。ブリ、はまち、サバ、サンマ、マイワシなど。いずれも、食卓でおなじみの身近な魚です。

犬も魚をおいしく食べて、健康に

ここまで4回連続でお送りしてきた「犬に魚を与える栄養学的メリット」、いかがだったでしょうか?今回は「魚」というくくりでご紹介してきましたが、肉、野菜、果物、穀類、それぞれに様々な背景、特徴的な栄養素があります。

栄養について知れば、犬のための食材選びも楽しくなります。そんな風に選んで作った食事が、犬の健康に貢献できれば、それは更に嬉しいことです。ぜひ身近な食材の栄養に、目を向けてみてください。

この記事は犬の健康基礎情報を学ぶ「ぐり通信」のバックナンバーです。
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