犬のツボマッサージ

犬のツボマッサージを基礎から解説(2)呼吸器系の不調時に、「肺兪」の話

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Office Guriの諸橋直子です。さて前回に引き続き「犬のツボマッサージ」について基礎知識を解説していきます。またこの記事シリーズを書くきっかけとなった書籍を改めてご紹介しておきます。

決定版 犬・猫に効くツボ・マッサージ 指圧と漢方でみるみる元気になる

また解説記事は今回が3回目となります。過去記事はWEBで公開中ですので下記よりご確認ください。

書籍紹介:犬のツボマッサージに興味がある方へ

犬のツボマッサージを基礎から解説(1)ツボってそもそも何ですか?

前回は「ツボ」を理解する上でか欠かせない「経絡」と言う考え方についてお話ししました。軽く復習すると、中医学では私たちの体の中に「経絡(けいらく)」というエネルギーの運搬ルートを想定しており、そのルート上に「経穴=ツボ」が存在していると考えています。

「ツボ」は経絡が皮膚表面に表出したスポットであり、ここを刺激することでその経絡と繋がっている内臓や体の各部位にアクセスできるというのが鍼灸治療の基本の考え方です。

ではこれって具体的にはどういうこと?というのを今回は解説していこうと思います。

「ツボ」を刺激するとなぜ良いの?呼吸器系の不調に使う「肺兪(はいゆ)」を例に解説!

「ツボ」を刺激すると体の不調を整えてくれるというイメージは、多くの方が何となく持っていると思います。ではツボを刺激すると、なぜ不調が整うのでしょうか?これを解説するのに今回は、これからの季節につけるツボ「呼吸器系の不調を整えるツボ:肺兪(はいゆ)」を例にとってお話ししていこうと思います。

肺兪は呼吸器系の不調、例えば咳、喘息、乾燥による呼吸器のトラブルに用いられるツボです。さらに呼吸器系のトラブルだけでなく、「乾燥」が原因で起こる皮膚トラブルにも用いられます。ではなぜ肺兪は呼吸器系にトラブルに良いのでしょうか?さらにいうと、なぜ乾燥による皮膚トラブルの際にも用いられるのでしょうか?

解説を進める前に、肺兪の位置を確認しておきましょう。

肺兪:位置の確認と探し方

肺兪は「後肢太陽膀胱経」に属するツボです。「後肢太陽膀胱経」は目頭から始まり鼻、首を通って犬の背中に達します。そこから脊髄を挟んで並行に走り、後ろ足の第四指に達します。また「太陽」とあるように、体の表面に近いところを走る経絡です。

*経絡の名前の解説は前回の記事で行っていますので参考にしてください。「経絡の種類」の項目を参照。

さて肝心の肺兪ですが、探し方はシンプルで以下の通りです。

・犬の背中にあるツボである
・第三、第四胸椎の間

「胸椎って?」と疑問に思う方も多いと思うので説明すると、背骨のうち肋骨が出ている骨のことです。犬の場合は13本肋骨がありますので、胸椎は全部で13個。首に近い方から第一、第二と数えていきますので今回は首から数えて3個目、4個目の間という風に探してみてください。第三、第四胸椎の間、背骨を挟んで左右2箇所に肺兪があります。

ツボを探すって難しい!鍼以外は「だいたい」でOKです。

さてツボの位置を解説してみましたが、正直「探すの難しい!」と感じた方が多いのではないでしょうか?

その感覚は私自身もすごくよくわかります。何故なら私自身、犬のツボマッサージ講習会に何度も参加していますが、その都度そう感じていたからです。

最終的にはツボを解説した専門書とDVDを購入し、動物園で大型動物の骨格標本をじっくり観察することを重ねてようやく頭に骨の位置がイメージできるようになりました。そこまでしてようやく、ツボも探しやすくなったという経緯があります。

なので「探しにくい!」というお気持ちは実によくわかります。一方、安心できるポイントとしては「鍼を刺すわけではないので、家庭での指圧や温灸であれば、大体の場所がわかればそれでOK」とお伝えしておきます。

すでの以前の記事で書きましたが犬に鍼を行えるのは獣医師のみです。鍼であれば、正確にツボをとらえてピンポイントで刺す必要がありますが、指圧や温灸であれば、ツボ+その周辺への刺激でも問題ありません。

なので犬のツボ初心者の方は、初めは難しく考えすぎないことが大事です。まずは犬の体を実際に触ってみて「ここかな?」とあたりをつけて優しく押したり、周辺をマッサージしてあげることから初めてみるのがおすすめです。

「肺兪」を刺激すると、何故呼吸器系のトラブルに良いの?

肺兪は「兪穴(ゆけつ)」という種類に属するツボです。特に内臓へ直接働きかけ、調子を整えたり、治療効果が高いツボとして扱われます。

「兪穴」は外部からの刺激を内臓に伝える刺激点ですので、肺兪を刺激するとそれが直接肺に伝わり、不調の改善や健康増進に役立つというのが中医学の考え方です。そのため咳や喘息、これからの時期に多くなる呼吸器系の症状の場合、初めに選択されるのがこの肺兪なのです。

肺兪のように名前に「肺」の文字が入っているから肺に効くといったツボは他にもあり、例えば

・肝兪
・心兪
・脾兪
・腎兪

などがあります。

これらの兪穴はすべて肺兪と同じ、背骨と並行に走る線上、背中にあるツボです。そのためツボ初心者の方には探しやすいツボだといえるでしょう。

というわけで今回は、「肺兪」を例になぜツボへの刺激が体の不調を整えるのか?を解説しました。

ところで冒頭で少し触れたこの内容、「肺兪は乾燥による皮膚トラブルの際にも用いられる」が気になっている方も多いのではないでしょうか?

犬の皮膚乾燥トラブルで悩む飼い主さんは多いですし、こうしたトラブルにもツボマッサージが助けとなるのであればぜひやってみたい!という方も多いと思います。

なので次回の記事では、なぜ肺へのツボ刺激が乾燥による皮膚トラブルに良いの?をテーマに解説していきます。

少々中医学の突っ込んだ内容のお話になる予定です。有料の中医学講座でお話ししているような内容も一部含む予定ですので興味のある方はぜひ、楽しみにお待ちくださいね。

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